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白い死神、又は白銀の天使(仮題)


ここは 死神の森

パンッ

すぐ隣から響き渡る 二十分ぶりの銃声
そしてすぐに訪れる静寂


無音


その先にある、幾つかの名前も知らない誰かの死体


照星の先、私たちには怯える彼らが見えている。
いつでも撃てる。でも隣の彼はそうしない。


恐怖と

絶望と

少しの希望


それらを私たちは、徹底的に与える。

パンッ

無慈悲な死を彼らに。
誰かのライフルには、そんな彫りこみがあった。

「そろそろ」

彼が小さく呟いた。
私も銃を取る。

そして、彼らの両翼へ別れる。
その精神が、もう限界に達していることを察しての指示だ。

弾を込める。
狙いを定める。

次の瞬間、彼らは飛び起きて逃げ始めた。

同時に引き金を引く。

最後尾からが、二人の間での決まり。

一人、また一人。

振り返った瞬間の絶望。
同時に湧く生への歓喜。

今日は、一人だけそれらを味わった。遠くへと消えてゆく唯一の影を、私は見送る。

既に細かく記録を取り始めていた彼は、いつものように涼しい顔で足元の地獄を丁寧に書き取ってゆく。


森には、静寂が戻った。



ここは死神の森。
寒さと死を、彼らに与える場所。

そして。
私はこの森で、この、死神と呼ばれる少年兵と、出会った……

−序章end−